異変が起きたのは、初回の理事会を終えたあとだった。新任の女性副理事長と彼女の友人の理事に、「会わせたい人がいる」と言われた。副理事長は子育てを終えた主婦で、マンション問題に熱心そうだった。先入観のなかった理事長は、「いいですよ」と決諾する。連れて行かれた先は「NPO近畿マンション管理士協会(以下、近マン協)」という団体だった。管理組合の運営では、公正で専門的能力を持つ「第三者」が後ろ盾になる。業務を委託する管理会社が純粋な第三者かどうか議論の余地があるけれど、一般にNPOの管理組合団体や弁護士、建築専門家、そしてマンション管理士は住民をサポートする第三者とみなされている。
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なかでもマンション管理士は、助言や援助といったコンサルティングを専門とする。二〇〇〇年のマンション管理適正化法の公布でスタートした国家資格で、年齢や性別、学歴の制限はなく、年一回の学科試験で選ばれる。登録者数は約一万五千人。資格を持つ者の助言だったら、誰でも間いてみたくなる。NPOで「協会」の看板をかけていれば信用するだろう。理事長が近マン協の事務所を訪ねると、五人ほどの管理士がいた。理事長が初めて面談したときのようすを語る。「いきなり、あなたえらいことになってますよ、管理人は違法な業務をしている、あいつは法を犯している、えらいことになってます、という感じで言われました。予備知識を持っていなかったので、よくわからん。違法とは思っていないと答えると、違法なんだ、じぶんらを使え、というようなことをいってきた。その決断を、理事長、あんたがしろ、という。そんな重要な決定をいきなり下せますか。一応持ち帰りますというと、あんたの責任や、住民が不幸になってもあんたの責任や、一ヵ月以内に結論出せと言ってきた。かかわりたくなかったので、回答しませんでした。相手にしたくなかったのです」